
イーサリアムもビットコインも、代表的な仮想通貨です。しかし、仕組みまで全く同じというわけではありません。そこで、イーサリアムについて、ビットコインとの違いを中心に確認しましょう。
ビットコインの大まかな仕組みをご存じでない場合、カテゴリー「送金のしくみ」「ビットコインの仕組み・特徴」を先にご覧ください。
イーサリアムの基本構造
イーサリアムの基本構造はビットコインと似ていますが、違う部分も数多くあります。そこで、主な違いを比較してみましょう。
項目 | イーサリアム | ビットコイン |
---|---|---|
発行通貨量上限 | 未定 | 2,100万BTC |
マイニング方式 | Proof of Work ,Casper | Proof of Work |
スマートコントラクト | あり | なし |
ブロック生成時間 | およそ15秒~17秒 | およそ10分 |
それぞれの項目について、順に確認しましょう。特に「ブロック生成時間」を中心に掘り下げていきます。
イーサリアムの通貨発行量上限
ビットコインは、2,100万BTCまで発行されることが決まっています。すなわち、2,100万BTCまで発行が完了した後は、使用可能なビットコイン量は徐々に減少することになります。その理由は、以下のユーザーが多数いると予想できるからです。
- ウォレットを紛失してしまい、バックアップもない
- スマホやパソコンを壊してしまい、バックアップもない
- ビットコイン所有者が亡くなり、遺族は、そのビットコインの存在を知らない
- その他いろいろ
一方、イーサリアムは最大発行量をどうするのか、決まっていません。今後決定されることでしょう。
- 2014年に、6,000万イーサ(Ether:イーサリアムというシステム内の通貨)を発行
- 同時期に、1,200万イーサを開発者用ファンドとして発行
- 1ブロック作られるごとに、5イーサが新規にマイナー(採掘者)に配布される
- いわゆるuncle(おじさん)にも、2~3イーサが時折割り当てられる
私たちは「イーサリアム(Ethereum)」と言いますが、正確には、イーサリアムはシステム全体の名称です。そのシステム内で使われる仮想通貨がイーサ(Ether)です。しかし、ここではイーサリアムという表現を使いましょう。
なお、uncleにつきましては、この記事の「イーサリアムのブロック生成時間」部分でご確認ください(クリックで記事に移動します)。
イーサリアムのマイニング方式
イーサリアムのマイニング方式はProof of Workですが、変更される予定です。その名をCasper(キャスパー)といいます。
変更が決まり、実際に稼働されるようになったら、その概要をここに記事化したいと思います。Proof of Workよりも効率的なシステムになる見込みです。
マイニングプールのシェア
ビットコインのマイニング争いが熾烈を極めるようになると、マイニングプール運営者は有利な環境を求めて、アルトコインのマイニングを始めるようになります。その結果、イーサリアムのマイニング競争も大変厳しいものになっています。
下のグラフは、マイニングプールのシェアを示しています。etherchain.orgからの引用です。

これは2018年3月5日時点のものです。数多くのマイニングプールが争っていますが、上位5つの寡占状態です。
では、マイニングプールに参加する場合、この5つから選べばよいでしょうか。実は、必ずしもそうとは言えません。
- 大きなマイニングプール:参加者が多いので、マイニングに成功しても報酬が少ない
- 小さなマイニングプール:マイニング成功確率は低いかもしれないが、参加者が少ないので、高めの成功報酬を期待できる
よって、マイニングプールへの参加を検討する場合、シェアの大きさよりも、システムの使いやすさや運営者の健全性などを重視すべきかもしれません。
スマートコントラクト
スマートコントラクトは、イーサリアムを説明するときに頻繁に用いられる言葉です。
ビットコインは、「どのウォレットから、どのウォレットに送金したか」という情報が記録されます。スマートコントラクトとは、送金情報に加えて、様々な情報を追加して記録できる機能です。
送金情報だけでないというのは、とても便利です。今後、イーサリアムを利用した様々なシステムが開発されていくことでしょう。
イーサリアムのブロック生成時間
イーサリアムもビットコインも、ブロックチェーンを基本構造としています。それをイメージ図にすると、以下の絵の通りです。

このブロック一つ一つを作るための時間が、イーサリアムとビットコインでは大きく異なります。ビットコインはおよそ10分かかるのに対し、イーサリアムは15秒から17秒くらいです。大幅に異なります。
ブロック生成時間が短いほうが、ユーザーとしては利便性が高いです。送金に要する時間が短くなるからです。
このブロックを作るための作業を、マイニングと言います。イーサリアムでもビットコインでも、このマイニングに成功すると報酬をもらえます。そこで、世界中の人々がマイニングに挑戦しています。
すると、世界のどこかで、ほぼ同時に異なるブロックが作られる場合があります。この場合、ビットコインは下の図のようにして短いブロックを捨てます。短いブロックをマイニングした人は、報酬が全くありません。

しかし、イーサリアムの場合、単純に短いブロックを捨てるという方法を採用すると、少々困ったことになる可能性があります。問題点として、2つが挙げられています。
イーサリアムの問題点
問題1:無駄な作業の発生
短い時間でブロックが作られるとはすなわち、マイニングのために必要な計算式がより簡単であるということです。すると、世界の複数のコンピュータで、マイニングが同時に成功するという例が多くなるでしょう。
実際に、ほぼ同時にマイニングが成功する例は、ビットコインよりも多くなっています。
すると、ブロックチェーンの一部として採用されず、不採用になるブロックが数多く出ることになります。この不採用のブロックに関連する作業が無駄となります。また、(ビットコインと比較して)容易にブロックを作れるので、セキュリティレベルも少々不安でしょう。
問題2:マイニングの集中化
あるマイナー(採掘者)が、マイニングに成功したとしましょう。成功したマイナーは、その情報を世界中に公開します。そして、その情報を受け取った別のマイナーは、改めてマイニングを開始します。
すなわち、「先にマイニングに成功した人は、他の人よりも(わずかですが)先に、新たなマイニングを始められる」ことになります。
これはビットコインでも同様ですが、ビットコインの場合はこの問題が顕在化しません。というのは、マイニングに要する時間が平均で10分になる設計なので、このスタートの差は誤差の範囲として無視できるからです。
しかし、イーサリアムの場合はそうはいきません。1回のマイニングに要する時間が15秒~17秒ですから、スタートのわずかな差が決定的な差になりかねません。
すなわち、特定のマイナーが全てのマイニングを支配しうることになります。
マイニングに関する問題点の解決方法
これらの問題を解決するために、イーサリアム独自のマイニングルールがあります。
- マイニングおいて、uncleも使用します
- uncleを採掘したマイナーにも、採掘報酬を付与します
ビットコインでは、不採用になったブロックは単に捨てられるだけです。イーサリアムでは、不採用になった部分(uncle)をマイニングに再利用することで、無駄となる作業を減らしつつセキュリティを高めています。
イーサリアムは拡張性が高い
また、イーサリアムはその「拡張性の高さ」でも有名です。具体的には、トークンを作りやすい仕組みになっています。ここで、トークンを大雑把に確認しますと、「仮想通貨の仕組みを使って作る、簡易的な仮想通貨」という意味です。
イメージ図は以下の通りです。イーサリアムという主要な仮想通貨の仕組みを使って、その上にいくつものトークンが作られている様子が分かります。

なお、「簡易的な仮想通貨」と言っても、トークンは立派な仮想通貨です。その仕組みが少し独特だというだけです。
では、このトークンですが、世の中にはいくつあるでしょうか。ビットコインを使ったトークンというものもあります。主要なブロックチェーンを使って、いくつものトークンを作れます。
イーサリアムがベースのトークン数
イーサリアムを基礎にしたトークンの数を調べるために、coinmarketcap.comのデータを確認しましょう。下の画像はその一部です(データ取得日:2018年1月19日)。

時価総額が大きな順に並べたものですが、赤枠部分をご覧ください。どの仮想通貨をベースにして作ったトークンか?が分かるのですが、ほとんど「Ethereum」と書いてあります。これは。イーサリアムです。
トークンを作る技術者から見て、いかにイーサリアムが使いやすいかが良く分かる結果です。ちなみに、coinmarketcap.comの一覧に出てくるトークンの総数は540種類ですが、イーサリアムをベースにしたトークンは436種類もあります。率にして80%以上です。
今後も、イーサリアムを土台にしたトークンが数多く作られることでしょう。
イーサリアムは、国内取引所のBITPoint、bitFlyerにて購入可能です。