
イーサリアムとイーサクラシック(イーサリアムクラシック)は、ともに仮想通貨の時価総額で上位を占めています。2つとも有名な仮想通貨です。しかし、元々は一つの仮想通貨でした。
そして、イーサクラシック誕生の過程において、壮絶な戦いが起きています。戦いというよりも「戦争」という表現の方がふさわしいかもしれません。
一体、イーサクラシックはどのようにして誕生したのでしょうか。
イーサクラシック誕生の経緯
イーサクラシック誕生の経緯について、イーサクラシックのホームページ画像を引用しながら概観しましょう。
1.イーサリアムの誕生
2015年7月30日、イーサリアムが公開されました。「スマートコントラクト」という言葉に代表される、多機能な仮想通貨です。誰もが、イーサリアムの明るい未来に期待しました。
2.ダオ(DAO)のクラウドセール
イーサリアム公開から9か月が経過した2016年4月、イーサリアムの機能を使ったダオ(The DAO)が公開されました。ダオトークンを得るために、多くの人がイーサリアムで支払いをしました。
3.ダオは150万米ドルを集めた!
ダオの販売は大成功でした。2016年4月30日か5月27日までの1か月弱の間に、1.5億ドル(158億円相当)の資金を集めることに成功しました。当時、これは世界最大の資金調達額でした。
4.ダオに深刻なバグが見つかる
史上最大の資金調達を実現し、関係者の興奮が続いていたであろう6月9日、ダオの深刻なバグが公表されました。ダオを公開する前に、バグがないか何度もチェックをしたことでしょう。しかし、見逃されていたバグがあったのです。
5.ダオがハッキングされた!
そして、2016年6月17日、その日が来ました。ハッキングされてしまったのです。史上最大の資金を集めたダオがハッキングされたとの報道に、市場はパニック状態になったことは想像に難くありません。
下は、この時のイーサリアムの価格の推移です(coinmarketcap.comから引用)。21米ドルあたりまで上昇していたイーサリアム価格は、あっという間に10ドルにまで下落してしまいました。

6.ホワイトハットハッカー現る!
ハッカーという単語は、システムに侵入して悪事を働く人々という意味で使われることがあります。ホワイトハットハッカーとは、その逆です。正義の味方というイメージでしょうか。
ホワイトハットハッカーはダオを取り戻すため、ハッカーと戦いました。戦うといっても、インターネット上の話です。お互いの顔は見えません。静かに、しかし激しく。「静かな戦争」という感じだったに違いありません。
その結果、70%のダオの安全を確保することに成功しました。しかし、残り30%については、上手くいきませんでした。
7.ソフトフォーク失敗
そこで、残り30%についても奪還すべく、ソフトフォークが試みられました。ソフトフォークとは、イーサリアムのシステムを維持しながらプログラムを修正することです。しかし、重大な欠陥が見つかり、6月28日にソフトフォークは断念されました。
8.ハードフォークしかない
この状況を打開するには、もはやハードフォークしかないという状況になりました。ハードフォークとは、今までのイーサリアムを捨てて「新生イーサリアム」になることです。ハードフォーク前後のイーサリアムで互換性はありません。
今までのイーサリアムは消滅させることになります。
9.ハードフォーク成功
ブロック数が1,920,000となったところで、ハードフォークが実行されました。そして、成功です。これで全ては解決し、ダオの事件は歴史の一ページとして語られるはずでした。
10.イーサクラシック(イーサリアムクラシック)の誕生
しかし、ハードフォークで捨てられるはずだった旧イーサリアムは、まだ生きていました。旧イーサリアムは消滅するかと思われていたため、世の中に驚きを与えました。ここから、イーサリアム支持派とイーサクラシック支持派の戦いが始まりました。
イーサリアム支持派は、イーサクラシックを消滅させるために行動しましたが、それは成功しませんでした。
11.イーサクラシックのコミュニティ成立
そして、イーサクラシックのコミュニティが成立するに至りました。さらに、それを待つことなく、大手取引所Poloniexがイーサクラシック(ETC)を上場させました。これをもって、イーサクラシックの存続は決定的となりました。
以上、イーサクラシックの誕生を簡潔に確認しました。イーサクラシックの誕生は、お世辞にも穏やかとは言い難いです。利害関係者の激しい戦いがあったことが容易に想像できます。
「本物のイーサリアム」はどちら?
経緯を概観すると、「では、本物のイーサリアムと言えるのはどちらだろう?」という疑問が出るかもしれません。これについては、両方とも本物という理解で良いのでは?と思われます。
イーサリアム(ハードフォークした側):旧イーサリアムの主流派で構成されている。
イーサクラシック:旧イーサリアムのプログラムをそのまま稼働させている。
今はそれぞれが独自の道を歩んでいます。イーサリアムとイーサクラシックを同一視する必要は、もはやないでしょう。
イーサクラシックが存続した理由
ここで、イーサクラシックが存続した理由を考察しましょう。支持する人が大勢いた、マイナー(採掘者)も大勢いたからということになりますが、なぜ、主流派についていかなかったのでしょうか。
それは、イーサクラシックのホームページを見ると伝わってきます。

- decentralized:非中央集権化
- immutable:変えることはできない
- unstoppable:止めることはできない
ホームページには、外部の者に干渉されずに生き続けるという強い意志を感じられる文章が並んでいます。
当時、ダオの事件は、あまりに金額が巨額でした。このためハードフォークが不可避だったのかもしれません。しかし、イーサリアムに欠陥があったわけではありません。イーサリアムのシステムを利用して作ったダオに欠陥があっただけです。
この状況でイーサリアムのハードフォークをするのはおかしいのでは?ということでしょう。
2018年1月、日本の大手取引所コインチェックからネムが盗まれました。500億円を超えるという巨額でしたが、ネムを管理するネム財団は、ネムのハードフォークを拒否しました。もしかすると、イーサクラシック誕生の経緯が、ハードフォーク拒否の決定に影響を与えたかもしれません。
イーサリアムとイーサクラシックを売買するには
この2つの仮想通貨を売買できる取引所等のうち、代表的な例をご案内します。
- ビットフライヤー(bitFlyer)
- DMM Bitcoin
イーサリアムを売買できるところは数多くありますが、イーサクラシックを売買できるところが少ないです。よって、両方とも取引できるところは、あまり多くありません。
DMM Bitcoinは、イーサリアムとイーサクラシックでレバレッジ取引ができるという特徴を持っています。