

仮想通貨を調べると、ハードフォークという言葉に時折遭遇します。今回は、ハードフォークとは何か、そのメリットとデメリットを考察します。
ハードフォークとは
ハードフォークを簡潔に書いてしまえば、「プログラムのバージョンアップ」です。ただし、バージョンアップ前後でプログラムに互換性はありません。
イメージとしては、下の図の通りです。ブロック3から4に進む際に、プログラムが更新されました(ハードフォーク)。この場合、従来のプログラムで作られたブロック4と、新プログラムで作られたブロック4が併存することになります。

では、従来のプログラムで作られたブロック4以降は、どうなるでしょうか。それは、「従来のプログラムを使うユーザーが存在する限り、ブロックが作られ続ける」ということになります。
すなわち、全員が新プログラムに引っ越しすると、旧プログラムは消滅することになります。一方、従来のプログラムがいいんだ!という人が大勢いると、新旧2つの仮想通貨が同時に存在し続けることになります。
ハードフォークが行われる理由
では、なぜハードフォークが行われるのでしょうか。主な理由を概観しましょう。
理由1:バグが見つかった
プログラムですから、バグはつきものです。放置すると問題が大きすぎるバグが見つかることもあるでしょう。
この場合、ハードフォークの前に、ソフトフォークを検討するでしょう。ソフトフォークとは、ハードフォークよりも穏やかなバージョンアップです。ソフトフォーク前後のプログラムで互換性がありますので、多くの人に受け入れられやすいです。
しかし、ソフトフォークで対応できない場合、ハードフォークするしかないかもしれません。バグを修復したプログラムにアップデートして、トラブルを未然に防ぎます。
理由2:発展的ハードフォーク
バグが見つかる場合のハードフォークは、マイナスの状態から通常に戻すという作業です。そうではなく、より良い仮想通貨にするために、機能を充実させるハードフォークをする場合もあります。
理由3:第三者のエラー等
例えば、The DAOがその例です。The DAOはイーサリアム上で作られたものですが、バグを突かれて巨額の資金を盗まれてしまいました。これを受けて、イーサリアムはハードフォークしました。イーサリアムに欠陥があったわけではありません。
理由4:新しい仮想通貨を作るため
多くの仮想通貨の特徴は「非中央集権」です。すなわち、だれがどのように仮想通貨を使っても構いません。よって、誰かがある仮想通貨をハードフォークして、新しい仮想通貨を作ることは珍しくありません。
ビットコインは理由4のハードフォークがとても多く、その数は数十以上あるでしょう。
ハードフォークのデメリット
様々な理由で行われるハードフォークですが、デメリットがいくつかあります。そのデメリットを考察しましょう。
デメリット1:プログラムの更新作業
ハードフォークは、プログラムの更新を伴います。このプログラムの更新ですが、とても大変です。というのは、その仮想通貨を使う人全員に影響するからです。
マイナー(採掘者)も、新プログラムに更新しなければなりません。更新しないと、エラーになってしまうかもしれません。エラーになれば、いつまでたってもマイニングに成功しません。
また、ウォレットを制作している会社は、ハードフォーク前にウォレットの更新が必要になるかもしれません。
そして、全世界に散らばるユーザーに、ハードフォークの情報を知らせるのは大変なことです。インターネットでどれだけ呼び掛けても、その情報を見逃してしまう人が多数出るでしょう。
デメリット2:バグの発生
プログラムの変更は、常にバグの発生リスクを伴います。今まで何事もなく稼働していた仮想通貨が、ハードフォークした後にバグが見つかって大騒ぎ!となってしまっては大変です。
プログラマーは、こうならないように努力しています。しかし、仮想通貨に限らず、事前に見つからず後から発見されるバグの例は無数にあるでしょう。
デメリット3:コミュニティの分裂
ある仮想通貨には、それを好んで使う人々が集まります。しかし、ある理由でハードフォークをするか?という課題が出てくると、賛成と反対で対立が激しくなることがあります。
結果、ハードフォーク後の仮想通貨を使い続けるのは賛成派だけで、反対派は従来の仮想通貨を使い続けるという場合があります。コミュニティの分裂です。
具体例としては、イーサリアムとイーサクラシック、ビットコインとビットコインキャッシュがあります。いずれも元々は一つの仮想通貨でした。しかし、ハードフォークによってコミュニティが分裂し、それぞれが別の道を進んでいます。
デメリット4:ハッシュレートの減少
ハッシュレートとは、マイニングに参加している人々の計算量のことです。この計算量が多いほど、不正行為が難しくなります(具体的には「51%攻撃~ビットコイン採掘者による不正な計算行為」でご確認ください)。
ハッシュレートが小さくなるほど、51%攻撃を成功させやすくなります。
ハードフォークしてコミュニティが分裂すると、その分だけハッシュレートが減少します。すなわち、仮想通貨の安全性がその分だけ減少してしまいます。
一般ユーザーにとってのメリット・デメリット
仮想通貨の開発者や研究者から見ると、ハードフォークは不可避と感じる場合が少なくないでしょう。しかし、一般ユーザーにとっては、正直なところ、ハードフォークは厄介な存在かもしれません。
一般ユーザーにとってのデメリット
一般のユーザーにとって、「仮想通貨が安定していること」はとても重要です。開発者同士で争っている、コミュニティが安定しない、ハードフォークがいつ起きるか分からない、そのような仮想通貨は使いづらいです。
一般ユーザーにとってのメリット
一方で、ハードフォークが起きると、旧仮想通貨と新仮想通貨の両方を自動的に保有できるというメリットもあります。従来の仮想通貨をそのまま保有できて、さらに新仮想通貨をもらえるのです。得した気分になります(実際に、得しているでしょう)。
一般のユーザーから見て、ハードフォークはメリットとデメリットがあります。
よって、ハードフォークに過敏にならず、普段は忘れているくらいで十分です。ハードフォークが起きそうになったら、自分が仮想通貨を預けている取引所等の情報をチェックしましょう。