

ビットコイン採掘(マイニング)の期限と上限
ビットコインには「採掘」というシステムがあります。この、より多くのビットコインが欲しいという人々の自然な感情と行動によって、ビットコインの信頼が保たれています。
しかし、ビットコインの採掘は永遠に可能というわけではありません。
10分ごとに採掘で新規にビットコインが発行されますが、その追加発行量は徐々に減少していき、最終的には2140年ごろに2,100万BTC(BTCはビットコインの単位)を発行して終了します。その後は1BTCも発行されません。
ビットコインのシステムを作ったSatoshi Nakamoto(本名なのかどうかも不明の謎の人物)氏は、通貨発行量が多くなることで生じるインフレーションが大嫌いなのだろうと推測できます。
通貨発行量の上限があらかじめ決まっていて、かつ、これからもビットコインに関心を持つ人々が増え続ける場合、ビットコインの価値は今よりもずっと高くなる可能性があります。しかし、はたしてそうなるでしょうか。
ここでは、採掘ができなくなった後にビットコインの信頼性を維持できるかどうかを考察します。
新規発行量(採掘報酬)の推移
ビットコインの新規発行終了後の世界を考える前に、そこに至るまでの様子を確認しましょう。
ビットコインの新規発行量(採掘報酬=マイニング報酬)は、当初は1ブロックごとに50BTCでした。そして、21万ブロックを採掘するたびに半減していきます。21万ブロックをマイニングするのに要する時間は、およそ4年間です。
そこで、4年ごとにブロック報酬が減少すると仮定しましょう。以下の通りになります。
当初の報酬:50 BTC
2012年:25 BTCに半減
2016年:12.5 BTC
2020年:6.25 BTC
2024年:3.125 BTC
2028年:1.5625 BTC
2032年:0.78125 BTC
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4年間というのは、長いようで短いです。こうして表にしてみると、みるみるうちにブロック報酬が減っていく様子が分かります。
ただし、ビットコイン価格が高値で推移する場合は、マイナー(採掘者)のダメージは小さいと予想できます。
2017年末、1BTC=200万円をこえていた時期、マイニングに1回成功すると2,500万円以上の利益でした。その報酬額を期待するのは難しいかもしれません。しかし、ビットコインにある程度の価格が付いていれば、マイニング報酬が減っても、マイナーは何とか運営できそうです。
新規発行終了後のビットコインの世界
採掘が果たしている役割については別記事「送金リクエストの検証~『ブロックチェーン』という技術」で確認していただくとしましょう。ここでは、採掘がビットコインの信頼性維持に役立っているとして話を進めます。
そして、採掘の目的は、新規発行のビットコインを得ることです。新規発行のビットコインを得られないならば、多額の資金を投入して高性能コンピューターを多数稼動させる意味がありません。
すると、採掘完了後(あるいは採掘完了が視野に入ってくると)、誰も採掘をしなくなってビットコインのシステムは崩壊するのでしょうか。
ビットコインは永遠に生き続ける
システムが崩壊する、すなわちビットコインが存在しなくなるかどうかという視点でいえば、「半ば永続的に存在する」と言えるでしょう。
ビットコインはP2Pシステムで動いています。すなわち、インターネットに接続されたパソコンなどにインストールされて活動しています。中央でシステムを管理する機関はありませんし、不要です。
このため、複数台のパソコンにビットコインのソフトウェアが存在する限り、ビットコインはずっと存在し続けるといえるでしょう。
ただし、誰にも見向きされないような状況になると、円や米ドルなどで評価した価値がガタ落ちになり、換金もできなくなるだろうことが予想できます。
実際にこのようになる場合には、P2Pを用いた仮想通貨そのものが衰退するのではなく、ビットコインのシステムを改良した他の仮想通貨がビットコインに代わって人気を集める可能性があります。
というのは、仮想通貨のシステムは極めて優れているためです。
ビットコインは衰退するか?
では、ビットコインはこのような衰退の運命になるのでしょうか。そうならない可能性もあります。
というのは、採掘によって得られるビットコインは、新規発行分だけではないからです。
採掘によってビットコインを得る方法
- 1.採掘で勝利を収めてビットコインの新規発行額を手に入れる
- 2.送金依頼者が支払う送金手数料を手に入れる
送金希望者は送金するときに、少額ではありますが送金手数料を支払います。この額は送金者が自由に設定できます。現在は新規発行額に比べてとても小さい額なので注目度は低いかもしれませんが、新規発行がなくなると、送金手数料が重要となります。
というのは、採掘によって得られるのは送金手数料だけになるからです。
新規発行終了後のビットコイン
現在は、採掘のために、少数の人々が多額の資金を投じて高性能コンピューターを多数投入しています。新規発行がなくなれば、この種の人々はビットコインには存在しなくなるでしょう。
・・・そして、おそらくは本来の姿になるかもしれません。すなわち、「P2Pに参加しているパソコンなどのコンピューターの余力を使って採掘がおこなわれる」です。
この場合、いわゆる『51%攻撃』に対して脆弱になるかもしれませんが、ビットコインがもっと多くの人に認知され、今よりも桁違いに大きな人数に使われるようになれば、一人一人の計算能力は小さくても、その合計計算力は極めて大きくなるかもしれません。
そうすれば、51%攻撃は容易でないということになります。
また、この過程で、現在は極めて安価な送金手数料ですが、もう少し高くなるかもしれません。しかし、紳士協定というレベルにとどまるかもしれませんし、銀行等による送金と比較して圧倒的に安価に送金できるというメリットが消えることはないだろう、と予想できます。
さて、次のページでは、ビットコインの取引が活発化すると、送金時間の遅延や、場合によっては送金出来ないというエラーが起こるかもしれない「ブロックサイズの問題」に触れます。