

仮想通貨の世界では、ICOが盛んです。仮想通貨の一分野として確立したといえるほどです。しかし、当サイトではICOに関する記事がほとんどありません。その理由を考察しつつ、どのようなICOならば紹介できるかを検討します。
ICOとは
最初に、ICOとは何?から確認しましょう。
ICOとは、何かプロジェクトを実行するために、一般の人々から資金を集めることです。円や米ドルなどの法定通貨ではなく、仮想通貨で集めることが多いのが特徴です。ICOは Initial Coin Offering の略です。
一方、似た言葉にIPOがあります。IPOは Initial Public Offering の略であり、ICOと単語が一つ異なるだけです。東京証券取引所(東証)などに株式を上場することを意味します。IPOをすれば、企業は一般から広く資金を集められます。
ICOによる調達額とその特徴
では、ICOによって、世界中でどれほどの資金が集まったでしょうか。グラフで確認しましょう(データはToken Dataからの引用で、縦軸の単位は100万ドルです)。

最も多い月(2018年1月)には、16億ドル以上集めたことが分かります。そして、2017年1月から2018年4月までの合計で、95億ドル以上集めました。日本円にして1兆円規模です。大変な金額です。
なお、上のグラフの形を見て、気づくことはないでしょうか。それは、「ビットコイン価格の推移と似ている」ということです。下はビットコインの週足チャートです。

2017年、価格が徐々に上昇していました。そして、年末にかけて急上昇しました。その後、急反落したものの、高値を維持しています。ICOで集めた額と動きが似ています。
2017年のビットコイン価格急上昇で、世界中の人々の注目が集まりました。これにあわせて、ICOも注目を集めたと予想できます。
ICOの安全度
以上のことから、ICOとIPOは「資金を集める」という点では似た仕組みであり、ICOで効果的に資金調達できたことが分かります。しかし、その規制レベルは桁違いに違います。IPOは審査がとても厳しいです。
一方、ICOに審査はありません。誰でも自由にできます。
また、上場株式会社が新株や債券を発行して資金を集める場合、厳格な手順があります。その手順に違反すれば、厳しい罰則が待っています。
しかし、ICOを直接規制する法律はないように見えます。仮想通貨法は、ICOを直接的に規制するための法律だとは言えないでしょう。世界的に見ても、ICOの規制は発展途上です。
という訳で、詐欺的なICOや、実質的な内容が乏しいICOを見つけることができます。
Token Dataによる分析
上で紹介しましたToken Dataでも、以下の通り分析しています。
「2018年4月に募集が終了したICOのうち、7割が、トークンセールの終了を公表しなかったり、インターネットから完全に消えてしまったりした。ICOが失敗したのだろう。これは、Token DataがICOの調査を開始した2016年以降、最も高い割合である。また、多くのプロジェクトにつき、質がとても低い。」
ICOに詐欺的案件が多いことは、あちこちで指摘され続けています。にもかかわらず、全世界的に改善の様子が見られないことが分かります。
ホワイトペーパー
詐欺的などと判定する方法を確認しましょう。ICOをするに当たり、事業者はホワイトペーパーという文書を公開します。「どういう事業をしたいからICOをします」という内容が書いてあります。
読んでみると、「こんな内容で資金を集めてもいいの?」というくらい、内容が浅い場合があります。何十億円というレベルで資金を集めようとしているのに、財務や法務関連についてほとんど書いていない場合もあります。
海外からの報告を見ますと、ICOで資金を集めたけれども事業が進んでいない、という例も見つかります。
要するに、未来に向かって野心的で魅力的なICOがある一方、「これはちょっと・・・」というものも混じっています。こうなると、どれを紹介してよいのか分かりません。魅力的なICOであっても、当サイトで紹介するのをためらってしまいます。
正確には、過去、当サイト記事でICOを紹介したことがありました。しかし、ホワイトペーパーに書いてある内容と現実で異なる部分が複数見つかったため、1週間ほどで記事そのものを削除しました。
同じような失敗を繰り返したくないという思いがあります。
当サイトのICO紹介基準
では、今後もずっとICO記事を書かないかと言えば、そういう訳でもありません。ICOのマイナス面を強調するあまり、メリットを捨ててしまうのは、あまりに惜しいです。
そこで現在は、以下の手続きを採用しています。
ICO紹介までの手続き
魅力的だと思えるICOを見つけたら・・・
- 1.ホワイトペーパーを読み込む
- 2.不明点について、事業者に照会する
- 3.事業者に直接会って、意見交換する
- 4.ホワイトペーパーに書いてある事業協力者に連絡を取り、ホワイトペーパーが事実か確認する
当サイト運営者は監査法人ではありません。このため、財務諸表や銀行口座残高を見せてもらうことはできません。よって、IPOの審査などに比べれば足元にも及ばないのですが、少しでも良い情報をお届けしたいと考えています。
ただ、海外のICOの場合は、以上4つのステップを踏むことができません。語学力に問題はありませんが、海外は遠すぎて会いに行けません。。
仮想通貨法を順守しているかどうかの確認もできませんし、海外ICOは記事化しないのが現実的な選択肢のように見えます。
なお、金融庁に登録済みの取引所によるICOの場合は、ホワイトペーパーの内容を元に記事化することがあります。金融庁登録済みならば、詐欺の可能性は極めて低いと予想できるためです。
ICOで投資する方法
ここで、ICOで投資する一般的な方法を確認しましょう。以下の通りです。
- 事業者がICOする旨を、ウェブサイト等で公開します。
- 読者はホワイトペーパー等を読み、投資すべきか決めます。
- イーサリアム等を使って、ICOで発行される仮想通貨を購入します。
- 「プレセール」期間中に買うと、通常よりも安く買えることが多いです。
- セール期間終了後は、特定の取引所等で売買できる場合もあります。
こうしてみると、いくつか気づきます。
その1:プレセールで買うのがお得
事業者は、プロジェクトがあるけれど資金が十分でないから、ICOをします。よって、少しでも早く資金が欲しいです。その要請に応えて早く資金を出してくれる人には、有利な内容で仮想通貨を売ってくれます。これが「プレセール」です。
その2:取引所に上場するか
セール期間終了後、その仮想通貨を、取引所で売買できる場合があります。取引所で仮想通貨が売買できるようになることを、上場と言います。上場されるかどうかが、ICO投資でポイントになりうるでしょう。
というのは、ICOに投資したけれど、お金が必要になったから売ろうという場合、取引所に上場されていないと自由に売れません。また、上場されていれば、価格が上昇したから売って利益を確定しよう!ということができます。
よって、「ICOの後、日本国内の取引所に上場する可能性があるか」も、あわせて確認したいです。なお、上場する取引所が金融庁登録をしていない場合は、警戒が必要です。その取引所が日本の法律に従うと期待するのは、難しいからです。
上場しない場合は、購入した仮想通貨を換金する方法を確認しておきましょう。
ICOに投資すれば儲かるか
最後に、ICOで儲けられるかどうかを考察しましょう。
当サイトで、あるICOを記事化できたとします。そして、その記事を読んでいただき、自分自身でもホワイトペーパーを読んだうえで投資したとします。果たして、儲かるでしょうか。すなわち、そのICOは成功するでしょうか。
残念ながら、そのICOの事業が成功するかどうか、その結末は誰にも分かりません。
IPOで上場する会社が期待通りに発展するかどうか、事前には分からないのと同じです。この部分は、投資なので割り切って考える必要があります。
投資は、得することもあれば損することもあります。
そこで、ICOに自分の資金を投入する場合は、その事業が成功せず資金が失われても仕方がない、と諦められるくらいにしましょう。